写真術のお話

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しっかりと切り取る魔法

写真とは言ってみれば魔法のようなモノです。空間、時間を切り取り、保存できる方法によって、その場に居なかった人にも空気感や音、温度や香りという雰囲気を視覚のみを通して伝えることが可能な魔法です。また魔法とは受け側にもその素質が備わっていればいるほど、より多くの情報を受け取ることができるモノです。
私たちはこれを「写真術」と呼称します。

水路地/日比野友香:SONYα77 II 35mm f3.2 1/250 sRGB

そして第三者である受け手に、できうる限り多くのあらゆる情報を、視覚を通し的確に伝えるために、術者たる写真機の操作師は、あらゆる数値(パラメータ)を調整し、切り取る空間範囲を探し、丁度良い刻にシャッター操作を的確にこなす必要があります。

写真術はレンズによって効果が変動する

スマートフォンではこの操作ができないため、とらえた光を一度分解し、再構成する過程で「描き直し」、擬似的に似たような効果をつくり出しています。しかし本来の光を描き直してしまうことで失われるものも多く、受け側の感度によっては伝わるべきコトが伝わらないといった弊害も発生してしまいます。

岐阜城と月/日比野友香:SONYα7R III 600mm f6.3 0.8 AdobeRGB

たとえば月。肉眼で見たときとスマートフォンで撮影したときでは伝わり方が大きく異なります。「岐阜城と月」のような、第六天魔王信長公を思い立たせる大きな月を伝える場合、レンズを変えるしかありません。

車輪と影/日比野友香:SONYα77 II 90mm f2.8 1/2500

「車輪と影」のようなコントラストを活かした、逢魔が時へと向かう表現はスマートフォンでも可能です。しかしレンズが本来もつ集光力の差は如実に現れます。

車輪と影/一部拡大

スポークに絡まる蜘蛛の巣。スマートフォンの再描画でもこの色は出せますが、その際こうした細かなディテールのものは見えなくされてしまいます。
一見要らないように見える要素ですが、この自転車が長時間放置されていることを示す大切な情報です。

彼岸と此岸

彼岸花/日比野友香:SONY α77 II 35mm f1.8 1/2000 sRGB

イツノクラの写真術師(写真機操作師)、日比野友香は彼岸と此岸の堺を見つけ出す能力に長けています。その感性は「日本」そのものであり、境界が曖昧な世界の一部を切り出す作業を日夜続けています。この曼珠沙華はその代表ともいえる空間の一部でしょう。自身が絵師でもある彼女の感性は、日本を感じるイメージ写真撮影には最適な人材であり、写真術の開発責任者でもあります。

日比野写真術師・近景