産地×産地=日本の産品プロジェクト

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産品の潜在しているチカラを伸ばす

陶磁器であれば〇〇焼、織物であれば〇〇紬、〇〇染。伝統産業において産地の名を冠したブランディングは定番です。そのうえさらに産地を越えた「日本の産品」としてブランディング力を加え、連携した生産・流通の体制をデザインする計画です。

この計画の背景には、弊社イツノクラ多治見陶磁器工房を存続するにあたり、工房主が体験し、日々感じている問題が大きく絡みます。それは伝統工芸伝承地域の後継者問題(産業の縮小)およびその地域内だけの暗黙知や形骸化された慣習に縛られることです。新しく参入した人が新しいモノづくりをしていくためには少々制約が強く、作家ですら地域名ブランドを冠した際、「何を持って〇〇焼や〇〇紬、〇〇染なのか」のアイデンティティが脆弱になっていることも気がかりです。その理由の一端は下記です。

  • その土地で作られているから?
    →造り手が他地域へ引っ越すなどして、その土地から離れても名称を使用することがあります。(他地域で生産され持ち込まれている場合もあります)
  • その土地で取れる材料を使っているから?
    →原材料すべての流通はその土地内だけで賄えないことが現実です。
  • 現地の組合や団体などが認定しているから?
    →上記2つの現実がある以上、線引基準が曖昧で、認定のプロセスや信用担保が明確に買い手へ伝わっていないと価値の担保ができません。

こうした背景の条件を明文化と共に盤石にしていき、産地ごとの特性をかけ合わせたサプライチェーンをつくることがこの計画の骨子です。

まずは「やきもん-yakimon-」ブランド展開

産地を越えた同業連携。まずはイツノクラの得意領域である陶磁器に関し、「瀬戸(+美濃)+九谷」の実現を目指したいと考えています。この時に使用する共通名称として「やきもん」を充てたい考え。また産地名ではなく、その土地で大きく文化育成をした守護代の「藩名好み」という名称を提案したいと考えています。(下記例)

  • 九谷 → やきもん前田(加賀)好み
    さらに現地組合認定 → やきもん前田好み 九谷焼き
  • 瀬戸 → やきもん徳川(尾張)好み瀬戸焼き
  • 美濃 → やきもん徳川(尾張)好み美濃焼き

ブランド統一化のメリット

「やきもん-yakimon-」として統一することで、インバウンド観光客へのPRがやりやすくなります。それ以外にも生産地にこだわらないため、原型はある場所で作りながら、量産は分散するなど、サプライチェーンのように柔軟な生産・調達体制を組むことも考えられます。、またインバウンド観光客から見た場合、地方の知名度は決して高くはなくまた訪問地にも偏りがあるため、詳しくない人が第三者に産地名称で説明するよりも、「日本のやきもん」と説明してもらい、歴史に出てくる武将(守護代・大名)の名前を冠することで、興味のある人ならば地域への関心を引きやすくなることも考えられます。

国土交通省官公庁
「訪日外国人消費動向調査」2018年10-12月調査結果より

プレゼンテーションの方法

訪日外国人の来日目的に限らずですが、様々なことを見直すヒントになるため訪日外国人消費動向調査のグラフを引用しました。

訪日外国人の消費動向
訪日外国人消費動向調査結果及び分析
2018 年 7-9 月期 (速報) 報告書より

「日本食を食べること」と日本の文化について関心がある部分をピックアップしています。日本食に関しては割合が大きい意味もありますが、陶磁器をプレゼンテーションする上でまだまだやれることがあることを示していると捉えます。その背景に「日本の歴史・文化」があるのではないかと考えていたのですが、訪日外国人の方も少なからずそう思う人がいることをデータは示しています。

料理と器、外国人目線でのプレゼンテーション

弊社イツノクラでは管理栄養士の資格を持つ役員がデザイナーとして活躍しており、「器と地域(郷土)料理」の組み合わせに関して研究しています。

こうした中、料理との組み合わせを考えた「器」のプレゼンテーションと共に連携する共通項のお題として「お菓子(スイーツ)」を充てたいと考えています。

この背景にも江戸期の武家や町衆と茶の湯が関連してきます。当時武家や町衆の嗜みでもある茶の湯で培った和菓子文化に上記「藩名好み」が使えることで、和菓子だけに限らず、創作和菓子や洋菓子にも充てることが可能だと判断しているためです。

参考文献:『和菓子の真正性をめぐる多様な価値づけの登場―最近の萌芽的変化を事例に―』

.森崎美穂子.大阪市立大学大学院・創造都市研究科・博士(後期)課程.大阪市立大『創造都市研究』通巻17・18合併号 2018年 3 月投稿論文.

プロダクツデザインはしません。

イツノクラ弊社内でプロダクツデザインは行いません。産地作家同士、産地企業同士、産地作家+産地企業といった組み合わせにおいて、製品そのものの構造や素材、設計には大きく関与しません。代わりに方向性のデザイン(コンセプトデザイン)や販促デザイン(パッケージ)、産地における歴史的な根拠文献や史料の検索・調査は行い、販促に取り入れたり副次物のアイデアなどを提供します。

プロダクツデザインについては作家さんや産地企業さんのほうが詳しいと考えていますので、イツノクラはアイデア出しのときのファシリテーター役やまとめ役に徹する立ち位置を守りたいと考えています。